一通の手紙
梅雨入りしました。私の好きな紫陽花が、雨粒に揺れながら微笑んでいるようにも感じます。
雨の日も、気持ちの持ち方で随分と映る景色が変わるものですね。
今日は、産業医の立場から、
すべての職場が、支え合い、安心で健康的な場所になるように祈りながら
一通の手紙を綴ります。
まず、作業中に、不安を感じたときは、立ち止まってもいい、私はそう思っています。
「ちょっと危ないかも」「これでいいのかな」と思った瞬間、それは間違いなくこころの声だと私は確信しています。
そんなときは、無理に進めるのではなく、心の声に耳を傾けてみてよいと思います。
一人で抱え込まず、仲間に声をかける──それが、自分自身を守る第一歩だと思っています。
目には見えなくても、仲間がそばにいてくれるという安心感が、職場に信頼の絆を紡ぐと思います。
次に「聞くこと」は安全の入り口だと、私は考えています。
全ての作業には必ずルールがあります。
でも、私たちは完璧ではありません。忘れることもありますし、迷うこともあります。
「こんなこと聞いていいのかな…?」と遠慮せず、どうか確認してください。
小さな確認が、大きな安全につながると思います。
3番目は、「丁寧に働く」という当たり前を当たり前にしないことが大事、私はこう思っています。
今の社会では、より早く、より効率よくという流れが強く求められているようです。
けれども、丁寧な手順、やさしいまなざし、静かな気遣い、穏やかな時間―
それらすべてが、空気感や波動として、職場環境に影響を与えると思っています。
支え合う文化こそ、安心、安全、健康な職場を支える大きな柱だと思っています。
「責める」のではなく「支え合う」その想いが「場」を守り、育ててくれると私は信じています。
何か不安に思っていること、こうしたらいいのにと感じていることを声に出すことは、勇気がいることです。
こんなこと言葉にしたら、嫌われないか、仲間はずれにされないか、そんな感情が湧き上がってくるかもしれません。
自分さえ我慢すればいい、自分が自分の気持ちに蓋をして、周囲の場の雰囲気を壊さないことが大人の対応だと教え込まれてきたからだと思います。
でも、少しだけ勇気を出して、自分の気持ちに嘘をつかず、自分に誠実に、思ったことを響きにしてほしいと思います。
自分の本音に嘘をつかないで、身近な人との関係に素直に感謝して、
外の雑踏に気持ちを囚われず、眼の前の瞬間を丁寧に大切にすることが、
実は遠回りであっても、確実に、「土台を作ること」に繋がると私は信じています。
この季節特有の、足元の滑りやすさや視界の悪さも、
お互いの知恵と工夫で、最高に素敵な場所になるように、私は祝福を祈ります。
「安心できる職場のために」
雨の音が優しく響くこの季節
紫陽花が静かに笑みをたたえるように
私たちの心も、静かに澄んでいきますように
どうかこの場に集うすべての人が
不安を抱えたとき、勇気をもって立ち止まり
心の声に耳を澄ませることができますように
見えないところで支え合い
「大丈夫」と声をかけられる関係が
そっと、やさしく、広がっていきますように
どうか「聞くこと」が恐れや遠慮ではなく
安心と信頼への扉でありますように
小さな確認が、大きな安全へとつながり
迷いも間違いも、愛ある場で共有されますように
速さや効率に追われる毎日の中でも
丁寧に働くことの尊さを忘れず
その手、その眼差し、その想いが
波動となって職場を包み込みますように
どうかこの場が「責める」場所ではなく
「支え合う」光の場でありますように
感じたことを声にする勇気が
やさしく受けとめられますように
嘘なく、まっすぐに、自分の本音とつながり
静かに感謝を奏でる心が、守られますように
そして、すべての瞬間が
大切に、丁寧に扱われ
その積み重ねが、
揺るがぬ安心の土台となりますように
足元がぬかるむ日にも
視界が曇るときにも
知恵と工夫が交差し
この場所が祝福に満ちた場であり続けますように
この祈りが
すべての職場、すべての働く人へと
静かに届きますように
今日もありがとうございました。
令和7年6月10日(火)