県立文学館で「かがくいひろし展」が開かれている。
『だるまさんが』。
ページをめくるたびに、あの「どてっ」という音が聞こえてきそうだ。
『おもちのきもち』。
なんとも自由で、温かい発想に思わず笑顔になる。
『なつのおとずれ』。
一枚一枚の絵から、風や光、子どもたちの笑い声まで伝わってくるようだった。
人の心を動かす絵には、想像と音楽が流れている。
そんなことを思いながら会場をあとにした。
そういえば先日、東京へ向かう電車で、小学生くらいの男の子が隣に座った。
AIと小さな声で会話をしながら、難しい問題を解いている。
立派なシャープペンシルを持ち、とても賢そうな子だった。
「いったい何年生なのだろう。」
そんなことを考えながら、その様子を眺めていた。
便利な時代になった。
AIは、分からないことをすぐに教えてくれる。
でも、ふと思った。
この便利さの中で、子どもの感性はどう育っていくのだろう。
ちょうど日本ベビーフード協会の資料を読んでいた。
離乳食から幼児食への対象年齢が広がり、レトルト食品の開発も進んでいるという。
確かに、何を食べさせたらよいのか分からないと悩む保護者は少なくない。
祖父母世代も、昔の常識だけでは話せなくなった。
物価高もあり、手作りだけでは乗り切れない現実もある。
「手作りこそ母の愛。」
そんな時代ではなくなった。
ふと隣を見ると、その男の子はウイダーインゼリーや栄養補助食品を口にしていた。
それが悪いと言いたいのではない。
時代が変わったのだ。
でも、少しだけ考えてしまう。
食べることを通して伝えてきた文化。
季節の行事。
「いただきます」の意味。
家族で食卓を囲む時間。
そうしたものは、これからどんな形で子どもたちへ受け継がれていくのだろう。
AIは知識を教えてくれる。
でも、絵本を読んで笑うこと。
季節の風を感じること。
誰かと一緒に「おいしいね」と言えること。
そんな感性は、やはり人と人との間で育まれていくものなのかもしれない。
答えはまだ分からない。
でも私は、子どもたちがたくさん想像し、たくさん感じる時間だけは、未来にも残してあげたいと思っている。