本物とは

ラジオから流れてきた一つの言葉に、思わず耳を傾けた。

若いバイオリニストが話していた。

「音と音の間の空間を大切にしています。」

私は、その言葉の意味を知りたくなった。

音を出すことではない。

音と音の間にある「何もない時間」を大切にするという。

若いのに、その言葉の奥には、長い年月を生きてきたような深さを感じた。

きっと、いつも本物に触れているからなのだろうか。

それとも、本物を感じようとし続けているからなのだろうか。

そういえば、昔、お茶の先生から言われたことがある。

「本物を身につけなさい。」

あの頃の私は、その意味がよく分からなかった。

本物って何だろう。

偽物とどう違うのだろう。

見た目だけでは分からないものは、この世にたくさんある。

ダイヤモンドだって、本物より本物らしく見えるものがある時代だ。

では、本物とは何なのだろう。

そんなことを考えながら、今日は屋上で育ったズッキーニでポタージュを作った。

ABCクッキングのレシピを何度も見返しながら、一つひとつ確かめるように作る。

誰かに評価されるわけでもない。

ただ、目の前のことに丁寧に向き合い、自分の手でつくる。

出来上がったスープを口に運ぶ。

その優しい味に、思わずにこっとしてしまう。自画自賛

その時間を楽しんでいる私は、まさしく本物の私だった。

それでも、本物とは何かと聞かれたら、まだ答えは出せない。

でも、本物は誰かに証明してもらうものではなく、日々の暮らしの中で、自分自身が静かに感じるものなのかもしれない。

いつも自分に正直に、自分らしく生きること。

それもまた、本物への追求なのかもしれない。

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